試合は「強くなったら」参加するではなく、「強くなるために」参加するもの。初心者の方も勇気を出してまずは出場してほしい。
日本のパワーリフティングクラシック部門105kg級で全ての種目、トータルにおいて日本記録を保持する武田裕介選手。現役トップ選手でありながら、ジムのコーチ、そして大会運営役員と様々な顔を持ち、パワーリフティングの普及に努める「最強の男」にインタビューを試みた。
Q: 武田選手は今は大きい身体をされていますが、パワーリフティングをはじめた当初は、別人のように細かったとお聞きしました。
武田: 高校生からパワーリフティングをはじめましたが、最初は59kgで、旧階級で60kg級でした。
大学生の時に市川正光選手に憧れて、クラシックでのトータル800kg超えを目指したい、と増量を開始致しました。1年半で30k近く増やしましたが、そこまで記録は伸びませんでした(笑)。
そこから増量した身体に慣れ、増量した身体に合う動きを作り、コツコツと記録を伸ばし日本人2人目のクラシック 800kgを達成することが出来ました。継続は力なりです。
Q: 武田選手は東京で最も多くの選手を輩出しているパワーリフティングジム「TXP」のコーチを務められています。6/9東京ベンチには試合初出場の選手も出られると聞きました。試合出場を悩んでいる人へ「背中を押す」ことはコーチの重要な役目と思いますが、ご苦労はありますか?
武田: 有難いことに、今大会でも多くの選手が試合に参加頂けることになりました。初出場の方もいらっしゃいます。大会に向けた選手の調整を見ているうちに会員様から参加を希望してきて頂けますので苦労はありません。良くジムでお伝えさせて頂いているのは「強くなったら」参加するのではなく、「強くなる」為に参加することが成長に繋がるということです。「背中を押す」より、「一歩踏み出しやすい」環境作りを目指しております。
Q: 6/9東京ベンチプレス大会には多くの方に出場していただきたいですね。
ところで「クラシック(ノーギア)」部門が始まってから、初心者でも試合は気軽に出場できるようになりましたね。各地方大会ではクラシック部門の選手が大半を占める様になってきました。クラシック、エクイップ(フルギア)について、武田選手はどのように捉えておられますか?
武田: 高校、大学の選手権がエクイップからクラシックに移行してきていることから、若い選手のエクイップ参加は私たちのTXPのような専門ジムの頑張りによるのではないかと考えております。今年の全日本選手権には83kg級の選手がエクイップに初参加します。ギアをやってみたい、挑戦しやすい、そんな選手の意欲に応えやすい指導も意識しております。来年の全日本選手権には私も出場するかもしれません。
Q: なんと!?武田選手が来年の全日本選手権に参加の可能性あり、ですか!現在のエクイップの同階級のトップ選手たちとの戦いを想像すると今から楽しみで仕方ありません!!
武田: まだ決めてませんよ(笑)。でも自分で言うのも恐縮ですが、チャンピオンクラスの選手というのは、自分の気持ちだけではなく、業界全体のことを考えて動く責任があると私は思っています。私がエクイップ全日本に出場することでパワーリフティング界が盛り上がるなら、検討するべきことだと思っています。ただ自分の主戦場はクラシック部門であることには変わりありません。まずは6月の世界クラシックパワーリフティング選手権大会に自身初の93kg級で出場致します。また93kg級でトータル 800kgを目指して頑張りますよ。
■武田裕介(たけだ ゆうすけ)
1985年生まれ。パワーリフティング歴18年。
パワーリフティング専門ジム「TXP」ヘッドコーチ
60kgに満たない小柄な体格だった高校生の頃から毎年記録と階級を向上させ続け、08年から18年までジャパンクラシック選手権において破竹の11連覇。2013年世界クラシック選手権では 105kg級で総合4位に食い込んだ。2015年 と2016年には ベンチプレス 部門で1位にもなっている。2018年ジャパンクラシックでは105kgでトータル830kgという日本人最高記録を樹立した。現在の105kg級において全種目、トータルとも日本記録を保持している『日本最強の男』の今後の活躍に目が離せない。
スクワット 320kg(現日本記録)
ベンチプレス 220㎏(現日本記録)
デッドリフト 305kg(現日本記録)
トータル 830kg(現日本記録)
(※全てクラシック(ノーギア)での記録)
インタビュアー&構成:樹田 弁太